給与計算の仕組みと注意点

経営者によくある給与計算業務の誤解

給与計算は、会社にとって毎月必ずきちんと行っていなければならない最も重要な業務です。
ところが、経営者は次の事をあまり理解していません。

かなりきびしい発言かもしれませんが、これは「事実」です。
 事務員の給与を時給換算するといくらかご存知でしょうか?

月額25万円の事務員を月平均160時間の労働時間として計算すると、時給は約1563円です。日給に換算すると約12,504円。 従業員数にもよりますが、給与計算業務が、 丸1日かかれば、12,504円。 2日かかれば25,008円かかっているのです。 給与計算業務をアウトソーシングするかどかの判断は、ただなんとなくではなく、具体的な数字に換算して、コスト比較をしてみてはどうでしょうか。



 是非、一度、従業員と向き合って話し合う機会をもってください。



 特に一番多い間違いが、社会保険料の天引きです。

新入社員の社会保険料はいつから引いたらいいのか? 先月の退職者はいつの給与まで社会保険料を控除するのか? 給料が変わったら保険料が変わるのか? 毎年改定される健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料等、保険料の改定時期がすべて違うことを知っているか? ほとんどの小規模会社は、保険料の改定時期を意識せずに、給与計算を始めたばかりの料率でずっと計算していたり、多く引きすぎていたり、少なかったりしています。 賃金台帳を見せていただくと、大体どの会社もどこか間違っているのです。 残念ながら税理士事務所にアウトソーシングしている場合も同様です。 さらに、残業代や欠勤控除などの計算方法もまちまちです。

基本給だけを割増賃金の基礎単価にしている
月給を暦日数などで割って、残業代、欠勤控除などを計算している
そもそも残業代込みなので、勤怠を集計していない
年間休日数を決めていないにも関わらず、なぜか残業代の割増単価が決まっている。

これらはすべて、給与計算としておかしな事なのです。

実際よりも少ない支給であれば、さかのぼって給与を支払うことになってしまいます。
そして、労働基準監督署の調査でも、一番チェックされるところです。



 残念ながら税理士さんは、源泉所得税の部分にしか興味がありません。

残業代や控除等は、お客様責任だと思っていますので、あえて口を挟みませんし、そもそも給与計算のロジックを知りません。
繰り返しになりますが、給与計算は、会社にとって毎月必ずきちんといなければならない、もっとも重要な仕事です。 給与計算の仕組みを理解し、もう一度社内の給与整備、アウトソーシングのご検討を強くおススメいたします。




給与計算の仕組み


ここでは、給与計算の根本的な仕組みを理解しておきましょう。
扶養者 1名
勤怠 労働時間 出勤日数 有給取得 有給残日数 休日出勤日数 普通残業時間 深夜残業時間
xxxxxx xxxxxx xxxxxx xxxxxx xxxxxx xxxxxx xxxxxx
休日週出勤時間 時給時間 遅刻早退回数 遅刻早退時間      
xxxxxx xxxxxx xxxxxx xxxxxx      
支給 基本給 役職手当 家族手当 住宅手当 普通残業手当 深夜残業手当 休日出勤手当
400,000 50,000 0 50,000 0 0 0
非課税通勤費 課税通勤費 非課税対象額 課税対象額      
20,000 0 20,000 500,000      
控除 健康保険料 介護保険料 厚生年金料 雇用保険料 社会保険料合計 社保控除後額 所得税
26,420 0 43,392 2,600 72,512 427,488 15,160
住民税 その他控除          
42,000 0          
  合計 支給総額 控除総額 差引支給額
520,000 129,672 390,328
平成24年8月の参考例(東京都の料率を採用)

主な注意点

◆ポイント1◆ 社会保険料の計算

健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料を計算する際には、基本給、役職手当、家族手当等のその他の手当、非課税通勤費等をすべて含めて総報酬額として扱います。 そして、その総報酬額から標準報酬月額を導き出し、その標準報酬月額に保険料率を乗じて保険料を算出します。


◆ポイント2◆ 所得税の計算

所得税を計算する際には、すべての報酬から社会保険料、非課税通勤費を控除して所得税を算出します。なお、扶養者がいる場合には、扶養者数を加味して算定します。


◆ポイント3◆ 保険料率の変更時期

健康保険料率・介護保険料率は、毎年3月に改定されます。(協会けんぽの場合)
雇用保険料率は、毎年4月に改定されます。
厚生年金保険料率は、毎年9月に改定されます。
健康保険料・介護保険料は支払い日基準のために給与天引きが翌月徴収の会社の場合 は、4月から改定し、雇用保険料率は、締め日基準のために4月に締めた場合は、5月から改定します。また、厚生年金保険料は、支払い日基準のために給与天引きが翌月徴収の会社の場合は、10月から改定されます。
そして、特別徴収住民税は、6月からの改定になります。
つまり、4月、5月、6月、10月に保険料率や源泉徴収の金額を変更し、また、7月、12月には、10人以下の会社の場合で「源泉所得税の納期の特例」を利用している場合は、給与明細書から所得税の総計を計算し源泉所得税の納付を行います。さらに、12月には、年末調整の処理を行います。
また、会社ごとに、昇給や賞与の支払いが発生すれば、その都度 給与明細の改定と賞与の保険料の支払、源泉税の支払いを行うことになります。つまり、毎月何かしらの給与明細書の変更や集計を行っていることになるのです。


◆ポイント4◆ 残業手当の計算

もっとも計算が難しいのがこの残業手当(割増賃金)の計算方法です。 まず、残業手当の計算における基礎賃金は、社会保険料の計算時の使用した総報酬額ではなく、一部の手当が含まれないという点です。 上記の例でいえば、家族手当、通勤手当、住宅手当等は除かれます。 その基礎賃金から時間単価を割り出し、労働基準法に準じた割増率を乗じて算出します。


いかがでしたか? 簡単そうで複雑な給与計算。 給与計算の仕組みを理解し、もう一度社内の給与計算業務の見直しとアウトソーシングのご検討を強くおススメいたします。