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賃金・退職金制度の再構築 |
もしも仮に従業員名がすべて記入された賃金台帳を会社内で紛失し、従業員の誰かに拾われたら・・・・・。・
なんの問題もなければかなり優秀な会社です。
多くの会社において、従業員の不満要因の上位は常に賃金に関してです。
それは、他社と比べて賃金が多いとか少ないの問題ではなく、同じ会社の同僚や先輩と比較して自分の賃金は妥当なのか?という点にあるのです。
究極の賃金制度とは、その賃金台帳を誰が見ても、誰もが納得する賃金が支払われている事です。
実際には、そんな簡単なことではありません。
年功序列制度、成果主義、昇給率のカーブなど その人の立場によって不平不満は必ずあるはずです。
特に、新卒採用者と中途採用者とでの賃金のアンバランスが問題視されています。
信じられないかもしれませんが、最近の若者は、我々の世代とは違い、お互いの給与明細書を抵抗なく見せ合うということをご存知ですか?
その場しのぎの賃金体系では、今の時代ではもう限界にきています。
「優秀な人」はすぐに転職し、「残念な人」ほど会社に居残るケースがほとんどです。
どんなに良い商品を開発しようと、どんなに良いサービスを提供しようと、最終的には優秀な人材こそが企業の継続に大きく左右するのです。
満足のいく賃金体系が従業員のモチベーション向上につながり、最終的には企業の業績につながるのです。
賃金・退職金制度、そしてその基礎になる評価制度ともう一度向きあってみませんか?
近年、「成果主義」という言葉が一人歩きをし、従来型の「年功主義」が悪しき慣行のようにとらえている方が多数いらっしゃいます。そもそも賃金制度の最も重要な点は、「評価制度」です。
賃金テーブルや賃金表にばかり目を向けていも、評価制度が確立していなければ、賃金制度としては未成熟と言っていいかと思います。成果主義は、一見聞こえはいのですが、評価基準が非常に不明確です。
営業職でいえば、運、不運もありますし、短期的な成果と長期的な成果もあります。
一方、年功制度は、一目瞭然に明確な基準があります。それは、年齢に応じ給与体系だからです。
中小企業では、大企業のような成果主義の短期的な成果にばかり目を向けていると人材が流動的になり、出入りの多い会社になってしまいます。そういう意味では、中小企業は中小企業にあった賃金制度を構築する必要があるのです。最近の中小企業では、成果も取り入れた職能給と年齢給を組み合わせた評価制度を取り入れている会社が多くなってきています。
繰り返しになりますが、賃金制度の再設計に最も大切な事は、賃金テーブルを決める前に、「評価制度」を確立することから始める必要があるのです。
<全体の流れ>(例)
会社ごとに新賃金制度構築の流れに違いはありますが、主な進め方の一例をあげておきます。
1.経営理念、経営戦略を再確認する。
新しい変革を実施する時には、必ず経営理念、経営戦略に立ち返ることが重要です。
会社設立時に立てた経営理念、経営戦略を実現する上で自社にとって「必要な人材像」を再確認する。
2.現状制度の問題点を把握する。
問題点の把握には、ざまざま要因があります。まずは、その要因になる材料を洗い出すことからはじめ
ます。業種、従業員数、従業員の年齢構成、従業員の身分構成、職種、賃金額、企業の賃金支払能力
などです。
3.新新制度のコンセプトを明確化する。
「必要な人像」を基に、能力主義、成果主義、年功主義、組み合わせ方式などの採用方針を決定します。
会社にあったオリジナル制度を決めるとが重要でです。
4.スケジュールを決める。
新制度導入には、必ず明確な導入期限を決め必要があります。余裕をもってスケジュールを立てます。
5.全員参加で「仕事内容の抽出」を行う。
従業員全員に「仕事内容」のアンケートをとり、各人が考えてる「仕事とは何か?」「仕事ができる人とは
どういう人を言うのか?」を全員に出してもらいます。
これが、「全員で決めた評価制度」の基礎になるのです。
思いもよらないことを「仕事」と考えている人もいます。
6.プロジェクトチームの編成
けして、人事部門だけが作業グループになってはいけません。各セクションから主任クラスの代表者を
集めプロジェクトチームの編成をします。そのメンバで、上記の仕事内容の分類作業を始めます。
そして「職能要件書」を完成させ、これが、まさに「評価基準」となるのです。
7.新賃金制度の構築
上記の職能要件書を基に、「賃金表」などを作成して具体的な新人事制度の全体像を作ります。
賃金表や賃金テーブルは、経営者と人事部門とで作成し、プロジェクトチームでは作成しません。
なお、賃金テーブルは、初任給等の市場価格を基礎データとして参考にするケースが一般的です。
また、「業界による相場」というのも重要な要素になります。
8.規定の修正
新人事制度にあわせ、就業規則、賃金規定等の変更を行います。
9.従業員への説明と新賃金制度の導入
従業員全員に対して、制度趣旨、内容をきちんと周知するための説明会を実施します。
そして、いよいよ新賃金制度を導入します。
そして、新賃金制度スタート後は、「人事考課制度」をしっかりと確立して運用していくことが大切です。
退職金制度を見直す場合には、すでに導入済みの企業年金制度との関係を切り離して考えることはできません。
中小企業の多くでは、税制適格退職年金制度、中小企業退職金共済などの退職金制度を活用していたり、厚生年金基金を利用されている企業が大半かと思います。
これらの制度は、制度の生い立ちや企業に導入した際の事由を忘れてしまい、退職金制度と年金制度を同じものとして捉えてしまうと大きな問題を引き起こしてしまう可能性を秘めています。
旧来の退職金制度は、老齢と退職が同時期に起こるケースが大半であり、またそれをベースに退職金制度や年金制度を企業に導入してきました。ところが、最近では転職が頻繁に起こり「退職=老齢」の関係がなり立たなくなってきおります。
たとえば、退職を支給事由になりたっている適格退職年金などが廃止されるケースなどでは、退職金制度を廃止したとしてもそれがセットとされている退職金規定は残り続けます。つまり、退職金規定は就業規則の一部として残り続けることになります。制度を移行しても規定が直していなければ、なにも解決していないのと同じです。つまり、就業規則の一部である退職金規定は、労働条件の一部として扱われているので、簡単にはなくせないために大きな問題になっているのです。
確定拠出年金制度、確定給付企業年金制度、中小企業退職金制度のメリット・デメリット、そして既存の制度からの移行や積み立て不足の問題等を総合的に勘案し、また労働条件の不利益変更になる場合には就業規則の変更のための従業員の同意の有無をも考量して検討していかなければいけません。
また、既存の従業員のの年齢構成も移行先の制度の検討材料の一つになります。
通常は半年から1年かけて制度の設計、従業員への説明会と同意の取り付け、規定変更、新制度のスタートといったフェーズを踏んで再構築していくことになります。
賃金制度とは違い、従業員にとっての不利益変更が伴うことが多いために、困難を伴うことがありますが、この退職金問題を避けていてはいけません。
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