労働基準監督署に届け出るのが就業規則作成の目的ではありません。
経営戦略の一部として位置付けるために「戦略型就業規則」を検討してみてはいかがでしょうか?
明らかに違う 届け出のための「従来型就業規則」 と 経営思想の「戦略型就業規則」
ここで、「戦略型就業規則」には明確に「守り」と「攻め」があります。
まず、「守り」を固めるには・・・。
労働基準監督署が目をつける「賃金規定」の落とし穴はココだ!
問題社員をはじめ、労働基準監督署に駆け込む社員が増えてきています。
その多くが時間外労働に関する割増賃金の未払い。
「そんなはずはない!」
と思っていても、賃金規定が不明確、計算方法が間違っていては、遡及未払賃金が発生します。
未払い賃金 x 従業員数 x 最長2年分 です。
「御社の年間あるいは月の所定労働時間は何時間ですか?」
実は良く知らない経営者の方が非常に多いのが現状です。
賃金の基本給に一律に残業手当等を上乗せして支給している会社も多いのですが、そのこと自体は問題ありません。ただ、その場合に所定労働時間を把握していないということは割増率を乗じた時間外手当が確定していないことに他ならないのです。
良くある誤解
ここではある具体例をあげて説明してみます。
例:所定労働日数が245日(1960時間)の会社Aで基本給35万円(固定残業代7万円分含む)というケースを想定してみます。
上記のように固定残業代を支払うこと自身問題ありません。
ただし、以下の計算ロジックがきちんと明確化されておいて説明できることが大前提です。
残業代の計算の基礎になる賃金は35万円―7万円=28万円です。
この人の1時間当たりの単価は、
28万円x12ヵ月÷196時間=1714円です。
すると、この人の1時間当たりの残業代は
1714円x1.25=2143円
つまり固定残業代は、70000円÷2143円=32.67時間=32時間40分に相当します。
中小企業の多くでは
①所定労働時間(上記の例では1960時間)が明確にされていない。
②1時間当たりの残業代の割増率x1.25を考慮ぜずに固定残業代を決めている。
③固定残業代が何時間に相当するかを理解していない
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つまり、未払い賃金問題が指摘されるポイントの多くが、残業代を一律支給しているためにその固定残業代が何時間分に相当しているのか、残業がその時間内に収まっているのかを理解していないからなのです。残業が深夜業にまで及ぶ場合は、x1.5の乗率を考慮して固定残業代を決めなければいけません。
「これだけ毎月残業代を支払っているんだから・・・」と思うかもしれませんが、残業の基礎になる単価が決まっていない限り、残業代を固定でいくら払おうが、残業代の乗率分、深夜残業の乗率分が後々未払い扱いにされても文句は言えないのです。
たかが就業規則、されど就業規則です。
もしも是正勧告がきてしまったら?
必ず、指摘箇所の改善をして、「是正報告書」を指定期日までに提出することになります。
労働基準監督官は、特別司法警察職員の権限を有するために、ほっておくと最終的には逮捕につながります。
なお、通常、割増賃金未払いにおけるさかのぼり支払い期間は3カ月間の場合が多いのですが、従業員からの訴えによる勧告の場合は、最長2年までさかのぼりることがあります。
もし「戦略型就業規則」に御興味をもたれたらご一報ください。
次には「攻め」の就業規則です。 以下 サンプル例を取り上げます。
従来型就業規則の場合
第○条<特別休暇>
従業員が次の事由により休暇を申請した場合は、次の通り特別休暇を与える。
①本人が結婚したとき。 5日
②妻が出産したとき。 3日
③・・・・・・・・・・・・
④・・・・省略・・・・
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戦略型就業規則の場合
第○条<特別休暇>
1.会社は社員からの申し出があったときは、その事由により,次の休暇を与える。
①本人が結婚したとき
・・・結婚式(または入籍)の日の翌日から起算して3ヵ月以内の任意の5日間
②妻が出産したとき
・・・出産の日から3日間
③・・・・・・・・・・・・
④・・・・省略・・・・
2.特別休暇は、その日数を分割せず暦日によって連続して与えるものとする。
なお、その日が本規則の休日にあたる場合は、当該休日は特別休暇日数に通算する |
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<解説>
もし4月に結婚した本人が私なら、従来型就業規則の場合、5月の連休に合わせて2日、夏休みに合わせて2日、12月に1日という形で休暇を取ることを考えます。
本来結婚に伴う特別休暇は、結婚に伴う引越しや新婚旅行のために与えるつもりでいたのかもしれませんが、本人の旅行や余暇のために利用されても文句は言えません。
インターネットの発達した今の時代は、人事担当者よりも、「就業規則の穴」を読み込んでいる若者は非常に多いのです。
では、次の例ではいかがでしょうか?
通常の就業規則の場合
第○条<自己都合退職>
社員が自己の都合により退職しようとするときは、退職の日よの30日前までに退職願いを会社に提出しなければならない。
戦略型就業規則の場合
第○条<自己都合退職>
1.社員が退職を希望する場合、あらかじめ退職希望日の2ヵ月前までに退職する意思
のあることを会社に通知しなければならない。
2.前項の通知の後、退職希望日の30日前までに退職の理由を付した退職届を会社に
提出した場合は、原則として退職届を承諾する。
3.前項の退職届の提出が退職希望日の30日を過ぎた場合であっても事情によりその
退職届を承諾する場合がある。
4.自己都合退職を希望する場合は、以下の規定を遵守しなければならない。
①退職の日までの間に従前の職務についての後任者への引継ぎを完了するため退
職日より遡って2週間は現実 に就労しなければならない。
②退職の日までは、会社から業務上の指示がある場合は、その指示に従わなけれ
ばならない。
5.上記の規定に違反した場合は、退職金の全部または一部を支給しないことがある
<解説>
もし私が本人ならば、この従来型就業規則を見て、退職願いを出したら、残りの有給休暇を消化するために退職日までのすべてを休むことでしょう。もちろん、そういう社員がほとんだと思います。転職が決まっていて気持ちが離れていれば、悪気はなくても今の会社の業務への影響など考えません。会社が引き継ぎをお願いしても、「大丈夫ですよ。そのうち後任の人もすぐ慣れますから。」といって引き継ぎをしてくれませんし、会社側も強制力はありません。
中小企業にとって一番の痛手は、引継ぎのない退職。
これでは、顧客の信用を維持することはできません。
通常の就業規則の場合
第○条<休職中の賃金>
休職中は無給とする。ただし、前号○号(会社命令による出向)の休職事由による場合は、その限りではない。
戦略型就業規則の場合
第○条<休職中の賃金>
1.休職中は無給とする。ただし、全○号の休職事由による場合は、その限りではない。(内容は割愛)
2.休職期間中も、社会保険被保険者資格は継続する。なお、休職期間中の社会保険料個人負担分の徴収方法に ついては、別に定める休職期間中の社会保険料・緊急連絡先に関するとり決めによる。
取り決め例:
(1)個人負担の社会保険料に関しては、毎月25日までに下記の口座に振り込むこと。
口座名:○○銀行○○支店 口座番号xxxxxxxx
(2)休職期間中は、療養に専念し、毎月1回、経過を人事部長に報告すること報告すること。
報告の方法はメール、電話等でもかまわない。
(3)休職期間中の緊急の連絡先を指定すること。
<解説>
休職期間中の賃金には関しては、企業ごとに自由に取り決めることができ、無給にしているケースがほとんどです。ただ、社会保険の資格は、休職期間中でも継続しています。継続している限り、社会保険料を支払わなければいけませんが、給与天引きができない場合に、休職者に、いきなり社会保険料の請求をトラブルことなく対処できますでしょうか?一般の従業員には、給与天引きされている社会保険料の認識はほとんどないと思っていいかと思います。きちんと就業規則に定めておき、トラブル時のエビデンスを準備しておくことが、「攻め」の就業規則の一つなのです。
もし「戦略型就業規則」に御興味をもたれたらご一報ください。
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